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AIを導入しても成果が出ない会社の共通点|DX動向2026から分かった5つの課題

「会社でも生成AIを使っていこう」

そんな方針が出され、ChatGPTなどを仕事で使い始めた会社も増えてきました。

メールの下書きを作る。資料を要約する。企画のアイデアを出してもらう。

確かに仕事は早くなります。ところが、しばらくすると、こんな疑問が出てこないでしょうか。

「AIを導入したけれど、会社として何が変わったのだろう」

2026年7月30日、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は「DX動向2026」を公開しました。

調査では、企業の58.0%がAIを「導入している」または「現在、試験利用をしている」と回答しています。生成AIを「導入している」企業の割合も、2024年度調査の22.6%から2025年度調査の44.0%へ上昇しました。

一方、AI導入による具体的な効果では、次のような差が出ています。

  • 業務が効率化したり迅速化した:91.6%
  • 顧客満足度が向上した:4.5%
  • 売上や利益が向上した:3.9%

AIを使う企業は増えています。しかし、効果の中心は、まだ業務の効率化や迅速化です。顧客への価値や売上につなげる段階には、進み切れていない企業も多いことがうかがえます。

この記事では「DX動向2026」の調査結果をもとに、AIを導入しても成果が広がりにくい会社の5つの課題を考えます。

AIやITに詳しくなくても大丈夫です。40〜50代の管理職が、自分の部署で何を確認すればよいのかまで、分かりやすく整理します。

※本記事の数値は、設問によって回答対象が異なります。各数値の対象はIPA「DX動向2026」の注記に基づいて確認しています。

AIを「仕事を早くする道具」で終わらせている

調査から分かること

AIの利用用途では、次の3項目が上位でした。

  • 文書・音声の要約・翻訳・校正:82.5%
  • 文書・レポートの作成:80.5%
  • 情報検索・収集・分析・レポーティング:77.0%

一方、「自社製品・サービスの高度化」は10.9%です。

文書作成や情報収集など、個人の業務を早くする用途が中心であることが分かります。

管理職が考えたいこと

「30分かかっていた資料作成が10分になった」

これは立派な成果です。ただし、時間短縮だけを目標にすると、部署や会社への効果はそこで止まりやすくなります。

次に考えたいのは、空いた20分を何に使うかです。

たとえば営業部門なら、次のようにつなげられます。

  1. AIで報告書の作成時間を短縮する
  2. 空いた時間で顧客の要望や商談履歴を整理する
  3. 次回の提案内容を改善する
  4. 提案後の反応や受注率を確認する

これはあくまで一例です。すぐに売上へ結びつかなくても、質問への回答時間、ミスの件数、顧客からの反応などを見れば、業務改善の手応えを確認できます。

AIで時間を減らすだけでなく、その時間を次の成果へつなぐところまで決めることが管理職の役割になります。

社員が個人でAIを使っているだけになっている

調査から分かること

生成AIの組織での利用状況では、「個人で業務利用している」が63.3%で最も高くなっています。

一方、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は11.9%でした。

この設問は、生成AIを導入・試験利用している企業に加え、利用に向けて検討中の企業も回答対象です。それでも、個人利用が先行し、部署の仕事の流れに組み込む段階までは進んでいない様子が見えます。

管理職が考えたいこと

Aさんはメール作成に使う。Bさんは議事録に使う。Cさんは一度も使わない。

この状態では「AIを使っている社員」がいるだけで、部署の仕事の進め方は変わりません。担当者が異動すると、使い方も消えてしまいます。

最初から大きな改革をする必要はありません。

  • 会議後の議事録のたたき台
  • 社内文書の構成づくり
  • 企画会議前の情報整理

まずは一つの業務を選び、「誰が使っても同じ流れで進められる形」にしてみます。使う場面、確認する人、完成とする基準を簡単に決めるだけでも一歩前進です。

AIを仕事に取り入れる基本から確認したい方は、AIを仕事で使えと言われた40代管理職へ|最初に知りたい使い方と注意点も参考にしてください。

経営・IT部門・現場が別々に動いている

調査から分かること

「DX動向2026」では、経営者・IT部門・業務部門の協調について、DXで成果が出ている企業の72.9%が「十分にできている」または「まあまあできている」と回答しました。

成果が出ていない企業では37.1%です。

また、AI導入・活用を主導する立場は「IT部門の長」が46.0%で最も多く、「経営層」は32.1%、「導入や利活用する現場の長」は27.5%でした。

この結果だけで、IT部門主導だから成果が出ないとは言えません。ただ、部門間の協調とDXの成果には強い関係があるとIPAは分析しています。

管理職が考えたいこと

営業部の仕事を改善するなら、営業の現場を知らないままでは、本当に困っている仕事を選べません。一方、現場だけでは、安全性やシステムとのつながりを判断しにくい場合があります。

必要なのは、次の3者が同じ課題を見ることです。

  • 経営側:何を成果とするのかを決める
  • IT部門:安全性や仕組みを支える
  • 業務部門:現場の課題と使い方を伝える

管理職に求められるのは、AIの専門家になることではありません。

「現場では何に時間がかかっているのか」「どこでミスが起きるのか」を整理し、経営やIT部門へ伝えることです。

月に一度でも、利用状況、困りごと、効果を共有する場を作ると、別々の取り組みになりにくくなります。

AI導入の「成功」を決めていない

調査から分かること

IPAの調査では、DXの成果指標を設定している企業は23.9%でした。4社に1社にも届いていません。

さらに、DXに取り組んでいる企業の26.8%が、成果が出ているか「わからない」と回答しています。

AIだけを対象にした数値ではありませんが、DXの取り組み全体で、成果を測る仕組みが十分に整っていないことが分かります。

管理職が考えたいこと

「とりあえず使ってみよう」から始めることは悪くありません。問題は、試す期間と判断する基準がないまま続けることです。

たとえば議事録作成にAIを使うなら、次のような数字を一つ決めます。

  • 作成時間を60分から20分にする
  • 修正回数を3回から1回にする
  • 会議の翌日までに共有する割合を増やす

問い合わせ対応なら、「回答案を作る時間を20%減らす」でも構いません。

最初から売上や利益を目標にする必要はありません。まずは、導入前と導入後を比べられる状態を作ります。

1か月試し、「続ける・直す・やめる」を判断する。これだけでも、「何となく便利」で終わるのを防ぎやすくなります。

AIを使わせるのに、教育とルールがない

調査から分かること

AI導入・運用上の課題では、次の項目が上位でした。

  • 専門人材が不足している:50.1%
  • 生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している:45.8%
  • 適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい:39.7%

また、AIや生成AIに特有のリスク管理を実施している企業は14.2%でした。

AIの導入が広がる一方で、人材育成や安全に使う仕組みは、まだ整備の途中にあると考えられます。

管理職が考えたいこと

「ChatGPTを使ってもいい」と伝えるだけでは、社員は判断に迷います。

  • 会社情報をどこまで入力してよいのか
  • 顧客や社員の個人情報を入力してよいのか
  • AIの回答を誰が確認するのか
  • 誤った内容を社外へ送らないために何をするのか
  • どのAIサービスを業務で使ってよいのか

最低限、これらの基準は必要です。

会社全体のルールがまだない場合、部署だけで勝手に決めてよいとは限りません。まずIT部門や情報管理の担当者に確認し、その範囲内で部下へ伝える手順をそろえましょう。

会社情報を入力するときの注意点は、ChatGPTに会社情報を入れて大丈夫?40代管理職が知るべき生成AIリスクで詳しく整理しています。

AIに限らず、メールの誤送信や共有設定のミスも含めて見直したい場合は、情報漏えいを防ぐには?サイバー攻撃だけではない身近なミスと対策もあわせてご覧ください。

管理職が明日から確認できる「AI活用5項目チェック」

難しいDX計画を、いきなり作る必要はありません。

まずは自分の部署について、次の5項目を確認してみてください。

  • AIを使う目的は決まっているか
  • 部署としてAIを使う業務を一つ決めているか
  • 現場・IT部門・経営側で情報を共有できているか
  • 導入前後の変化を数字で確認しているか
  • AI利用のルールと確認手順があるか

すべてに「はい」と答えられなくても問題ありません。

一つでも「できていない」と感じた項目があれば、そこが次に改善する場所です。まず一つの業務で試し、1か月後に振り返るところから始めてみましょう。

AIの勉強は「操作方法」だけで終わらせない

AIを仕事で活用するために、必ずしもプログラミングを学ぶ必要はありません。

特に管理職が知っておきたいのは、次のような内容です。

  • どの仕事をAIに任せるのか
  • 人が確認すべき部分はどこか
  • 会社情報や個人情報をどう守るのか
  • 時間短縮を業務改善へどうつなげるのか

本や無料動画で少しずつ学ぶ方法もあります。ただ、操作方法だけを覚えても、AIを仕事の成果につなげる考え方までは身につきにくいものです。

『部下としてのAI』で、AIとの仕事の進め方を考える

部下としてのAI
世界一流エンジニアの進化術 著者牛尾 剛 出版社文藝春秋

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まとめ|問題は「AIを導入したか」ではなく「何を変えたか」

「DX動向2026」からは、日本企業でAI導入が広がっている一方、その効果は業務の効率化や迅速化が中心であることが分かります。

ただし、効率化が無意味なわけではありません。大切なのは、そこで終わらせないことです。

管理職が確認したいのは、次の3つです。

  1. どの仕事を変えたいのか
  2. どうなれば成果といえるのか
  3. 安全に使うために何が必要なのか

AIに詳しい管理職になる必要はありません。

現場の課題を見つけ、関係する部門へ伝え、結果を確かめる。この役割は、これまで管理職が行ってきた業務改善と大きく変わりません。

まずは自分の部署の仕事を一つ選び、「何分減ったか」だけでなく、「その結果、何がよくなったか」まで確認してみてください。それが、AIを便利な道具から仕事を変える手段へ進める最初の一歩になります。

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