AIの話になると、「それはIT担当の仕事」「自分は事務だから関係ない」と感じることはありませんか。
毎月の集計、同じ内容のメール、何度も探す資料。そんな身近な仕事にも、AIを役立てる余地があります。
たとえば、これまで表への入力を担当していた人が、AIの助けを借りて集計方法を考え、「問い合わせが多い内容」を整理する。その結果をもとに、案内文の改善を提案する。
職種を変えなくても、仕事の関わり方を一歩広げられるかもしれません。
AIによって低くなりうるのは、「この仕事は、この職種の人にしかできない」と感じていた壁です。
この記事では、事務・営業事務・総務・パートなど、ITが専門ではない人が、今の仕事の中でできることを増やす方法を紹介します。
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「自分は事務だから」と、できることを狭めていませんか
営業は売る人。事務は支える人。企画は計画を作り、IT担当はシステムを扱う人。
会社によって違いはあるものの、こうした役割分担にはなじみがあります。担当が決まっていると仕事を進めやすい一方、「分析は自分の担当ではない」「改善案は上司が考えるもの」と、挑戦する前から線を引いてしまうこともあります。
「今の職種のままでは、できる仕事が増えない気がする」
「転職するほどの自信はないけれど、何か武器が欲しい」
そう感じるなら、まず見直したいのは、今の仕事の中にある経験です。
入力ミスが起きやすい場所、毎月手間取る集計、お客様から繰り返し聞かれる質問。日々担当しているからこそ分かることがあります。
AIを使うときも、この「現場を知っていること」が出発点になります。
もちろん、事務やパートの仕事は、これまでも会社を支えてきました。請求を正しく処理し、必要な情報をそろえ、仕事が滞らないようにする。それ自体に価値があります。AIは、その経験を別の仕事にも生かすための道具です。
POINT|職種は担当を示すもの。自分が挑戦できる範囲まで、決めつける必要はありません。
AIで広がるのは、専門職だけが担っていた仕事への入り口
AIが役立つ場面の一つは、「やりたいことは分かるけれど、方法が分からない」ときです。
関数の名前を知らなくても、集計したい内容を言葉で説明する。資料の構成が思い浮かばなければ、目的と相手を伝えて下書きを相談する。こうした使い方が、最初の一歩を助けます。
事務職なら、入力したデータから気づきを探す
問い合わせ記録を入力しているなら、「何についての質問が多いか」を整理するところまで広げられます。
まず、会社が許可した環境とデータで、AIに分類案を相談します。人が内容を確認して分類を整え、Excelで件数を集計する。「使い方の質問が多い」と分かれば、説明書や案内メールの見直しにつながります。
売上データでも、商品別・月別の比較方法を相談できます。ただし、「売上が下がっている」と分かることと、「下がった原因が分かる」ことは別です。欠品や販売日数など、現場の事情も確かめます。
営業職なら、提案の準備を進めやすくする
提案資料の構成、商談メモの要約、次回確認する事項の整理などにも使えます。
下書きがあれば、白紙から作る負担を減らし、お客様に合う内容を考える時間を取りやすくなります。社外に出す資料は、商品仕様や約束できる条件を本人が確認して仕上げます。
管理職でなくても、改善案を形にできる
「同じ内容を二つの表に入力している」「月末だけ集計が集中する」。このような困りごとを、AIとの対話で整理し、改善案のたたき台にすることもできます。
担当者が案を作り、上司やIT担当と実現方法を相談する。専門職との協力を始めやすくなることも、AIの価値です。
ここでいう「職種の壁が低くなる」とは、専門家と同じ判断がすぐできるという意味ではありません。これまで依頼するだけだった仕事に、自分も準備や提案から参加しやすくなるということです。
POINT|AIを使うと、今の担当業務から分析・資料作成・改善提案へ、一歩広げやすくなります。

会社への貢献は、売上を増やすことだけではない
「売上に直接関わらない自分は、評価されにくい」と感じるかもしれません。
でも、会社の利益は、売上だけで決まるわけではありません。必要な仕事の質を保ちながら、費用や手戻りを減らすことも貢献になります。
たとえば、毎月5時間かかる集計を、確認作業も含めて2時間にできたとします。
| 集計にかかる時間 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 毎月 | 5時間 | 2時間 |
| 年間12回 | 60時間 | 24時間 |
年間では36時間の作業削減です。
※効果を説明するための試算です。実際の導入実績ではなく、初期設定や学習にかかる時間は含みません。
空いた時間を、請求内容の確認やお客様への対応に使えれば、仕事全体を良くする余地が生まれます。残業や外注が減れば、費用削減につながる場合もあります。
ただし、36時間短縮しただけで、その分がそのまま利益になるわけではありません。導入費用や保守の手間も含め、何が良くなったかを見ていきます。
身近な改善には、次のようなものがあります。
- 二重入力を減らして、転記ミスを防ぐ
- ファイル名や保存場所をそろえて、探す時間を減らす
- 毎月の集計手順を再利用できるようにする
- マニュアルを整え、同じ質問への対応を減らす
こうした改善は以前から大切でした。AIは、手順を考えたり説明文を整えたりする補助として使えます。
POINT|時間・ミス・手戻りを減らすことも、会社を支える具体的な成果です。
「AIが使える」から「仕事をこう改善した」へ
AIを学ぶときは、ツール名だけで終わらず、仕事に起きた変化を言葉にしてみましょう。
| スキルの説明 | 成果が伝わる説明の例 |
|---|---|
| Excelが使えます | 毎月の集計を、確認込みで5時間から2時間に短縮しました |
| AIで文章を作れます | 案内メールのひな形を整え、作成時間を短縮しました |
| マニュアルを作りました | 引き継ぎ手順を整理し、担当者への確認回数を減らしました |
※いずれも伝え方の例です。自分の説明には、実際に確認できた成果を使います。
変化を記録するなら、難しい報告書は必要ありません。「何に困っていたか」「何を変えたか」「時間やミスがどう変わったか」を残しておけば、相談や面談で説明しやすくなります。
さらに、他の人も同じ手順で使える状態にすると、自分だけの時短から、職場全体の改善へ広げられます。
一方、成果がすぐに給与や昇進へ結びつくかは、会社の評価制度や担当範囲によります。改善に取り組む前に、上司と目的や使ってよい時間を共有しておくと、成果を認識してもらいやすくなります。
パートや補助業務の担当者も、仕事を一人で抱え込む必要はありません。「この部分を試してみたい」と相談するところから始められます。
POINT|「何の職種か」に加えて、「何を改善したか」を説明できることが、自分の強みになります。
AIを役立てるには、仕事を知る人の確認が必要
AIは、自然な文章で間違ったことを答える場合があります。計算式が動いていても、集計範囲や条件が違えば結果は変わります。
そのため、使い始めは次の三つを押さえましょう。
会社の情報を入れる前に、利用ルールを確認する
顧客名、個人情報、契約内容、未公開の売上などを、自己判断で外部AIへ入力しないようにします。名前だけを消しても、他の情報から相手や案件が分かることがあります。
練習には、自分で作った架空データが使えます。実務では、会社が認めたサービスと、入力を認めた情報の範囲を確認しましょう。
AIの提案を、少量のデータで確かめる
いきなり月次集計全体を変えるのではなく、10行程度の練習用データで試します。従来の方法や手計算と照らし合わせ、空欄や重複がある場合も確認します。
効率化後の確認や引き継ぎまで考える
元のデータが整理されていないと、分析や自動化も進めにくくなります。日付の書き方、商品名、入力ルールをそろえるだけで、改善につながることもあります。
自動化した後は、誰が結果を確認し、手順が変わったときに誰が直すかも決めておきます。
POINT|仕事の事情を知る人が目的と結果を確かめることで、AIの提案を実務に生かせます。
最初は、毎月繰り返す作業を一つ選ぶ
いきなりプログラミングや高額な研修から始める必要はありません。
最初の目標は、「今の仕事を一つ、少しラクにする」です。
1.困っている作業と時間を書き出す
「月末に三つの表をコピーしてまとめるのに、毎回1時間かかる」など、具体的に書きます。まずは一つで十分です。
2.架空データで、方法を相談する
会社が認めたAIを使い、実データを渡さずに作業方法を相談できます。
たとえば、次のように質問します。
『Excelで毎月、同じ列構成の三つの表をコピーして一つにまとめています。列は「日付・商品名・数量」です。実データは使わず、架空の例で、手作業を減らす方法を提案してください。Excel初心者にも分かるように、必要な機能、作業手順、結果の確認方法を説明してください。最初に、使用しているOSとExcelのバージョンを私に確認してください。』
「何をしたいか」に加え、使っている環境と確認方法まで伝えると、試しやすくなります。
3.仕事に合う機能を一つ覚える
集計ならExcelの関数やピボットテーブル、文章ならAIによる下書き、毎月の取り込みや整形ならPower Queryが候補です。
Power Queryは、データの取り込み・整形の手順を保存し、再実行できる機能です。基本的な処理は画面操作で設定できます。Microsoft公式の説明
Power Query自体は生成AIではありません。AIに方法を相談し、繰り返し処理はExcelの機能に任せる、という組み合わせもできます。
「Excel、ChatGPT、Power Query、自動化」のすべてを順番に学ぶ必要はありません。今の作業に必要なところから選びましょう。
4.確認にかかる時間も含めて比べる
操作が速くなっても、修正が増えては負担が残ります。準備・作業・確認を含めた時間と、ミスの有無を比べます。
うまくいった手順は短く記録し、実務への取り入れ方を上司や同僚と相談しましょう。
POINT|繰り返す作業を一つ選び、小さく試し、改善前後を比べることから始めましょう。
事務は入力から分析へ、営業は商談メモから資料作成へ、現場担当者は困りごとから改善提案へと仕事を広げる例。

今の仕事に合わせて選ぶ、最初の実用書3冊
無料で使える範囲や練習データで試して、「もう少し順序立てて覚えたい」と感じたら、実用書を一冊選ぶ方法があります。
選ぶ基準は、資格や流行よりも、自分が減らしたい作業が目次に載っているかです。
ここでは、出版社の紹介と目次から、目的の異なる3冊を選びました。
読了レビューではなく、向き・不向きは掲載内容をもとにした編集上の判断です。
価格は2026年9月11日に確認した出版社の税込定価です。
購入時の価格・版・対応環境は販売ページで確認してください。
Excelの手作業を減らしたい人へ

『テキパキこなす!エクセルの時短テク+AI活用術123』
入力・表の編集・関数・ピボットテーブルに加え、Copilotの活用を扱う本です。ChatGPT専用の解説書ではありません。
尾崎裕子 著/タトラエディット 編/インプレス/1,485円
- メリット: 普段のExcel操作から、取り入れられそうな時短方法を探せます。
- デメリット: AI部分はCopilotを扱うため、利用環境が合わないとそのまま再現できない場合があります。
- 向いている人: 入力や表の編集に時間がかかる事務・営業事務の人。
- 向いていない人: ChatGPTだけを学びたい人や、高度な自動化を作りたい人。
まず一つ、毎日使える操作を増やしたい人の候補になります。
毎月、同じデータ整理をしている人へ

『できるYouTuber式 Excel パワークエリ 現場の教科書』
データの取り込み・整形・追加などを、本と動画で学ぶ構成です。
ユースフル(大垣凜太郎)著/インプレス/1,980円
- メリット: 毎月繰り返すデータ準備を、再利用できる手順にする学習に向いています。
- デメリット: 最初に手順を設定する時間が必要です。2023年刊行で、練習ファイルの案内はWindowsを前提としているため、Mac利用者は環境との違いを確認する必要があります。
- 向いている人: 複数の表をまとめたり、不要な列を毎回削ったりしている人。
- 向いていない人: Excelの入力操作から覚えたい人や、主な悩みが文章作成の人。
「毎月このコピー作業をしているな」と思い当たる人なら、目次と自分の作業を見比べてみましょう。
AIの使い方を基礎から知りたい人へ

『できるChatGPT 改訂2版』
基本操作から文章作成、情報探索、データ活用などを扱い、練習用のプロンプトやサンプル資料も用意されています。
清水理史・できるシリーズ編集部 著/インプレス/1,870円
- メリット: AIに何を頼めるか、自分の仕事に当てはめる入り口を探せます。
- デメリット: Excelの自動化に特化した本ではありません。画面や機能が変わる場合もあり、掲載機能の利用条件は確認が必要です。
- 向いている人: AIへの頼み方が分からず、文章や資料の作成から試したい人。
- 向いていない人: 基本操作をすでに使いこなし、専門的なシステム連携を学びたい人。
何から始めればよいか迷う人は、まず目次から「自分の仕事でも使いそうな章」を一つ探してみてください。
3冊すべてを買う必要はありません。今回の候補は1,500〜2,000円前後。今の困りごとに近い一冊で、実際に手を動かしてみるのがおすすめです。
動画で操作を追いたい、質問しながら進めたいと感じたら、その段階でオンライン講座を検討すれば十分です。受講前には、学習内容だけでなく、対応OS・必要なソフト・追加料金も確かめましょう。
POINT|本は「スキルを増やすため」だけでなく、「今の困りごとを一つ解決するため」に選びましょう。
今の仕事の中で、自分にできることを一つ増やす
AIによって、すべての職種が同じになるわけではありません。専門知識も、経験も、仕事への責任も、引き続き大切です。
ただ、方法が分からず任せきりだった仕事に、下書きや分析の準備、改善案づくりから参加できる可能性は広がります。
「事務だから」「パートだから」と考えていた人にも、今の仕事を知っているからこそ、見つけられる改善があります。
大切なのは、今の仕事の中で、自分にできることを一つ増やすこと。
今日、毎週・毎月繰り返している作業を一つ、書き出してみてください。「ここが少しラクになったら助かる」。その気づきが、AIを自分の仕事に役立てる最初の一歩になります。
POINT|最初の行動は、改善できそうな作業を一つ見つけることです。

