毎月の売上集計が、いつもより早く終わった。
これまでは表を完成させるだけで精いっぱいだったのに、今日は数字を見直す時間がある。「この取引先、先月より注文が減っているな」。そんな変化に気づけたら、仕事の続きは少し変わります。
AIで時短できたら、これまで手が回らなかったことに取り組める。
確認を丁寧にする。担当者に話を聞く。気になっていた作業を改善する。あるいは、残業を減らして余裕を取り戻す。使い道はいくつもあります。
この記事では、最新調査を入口に、事務の仕事を例にしながら「浮いた時間で何ができるか」「そのために何を学ぶか」を考えます。今の経験を活かして、次にできることを一つ見つけてみましょう。
AIで時短した人は、浮いた時間を何に使っている?
2026年10月7日、アクシスコンサルティングが公表した調査では、主な集計対象者の66.3%が、AIによって仕事に使う時間の余力が生まれたと回答しました。
余力の使い道として挙がったのは、顧客・社内との対話(37.5%)、企画・新規業務(37.0%)、専門性の向上(34.5%)などです。
出典:アクシスコンサルティング株式会社調べ・調査リリース/調査元の企業サイト
調査は2026年9月11〜12日に実施。全国の20〜60代で、業務に月1回以上AIを使う647人が回答し、勤務先でAI利用が推進または認められている603人を主な集計対象としています。設問によって対象者数が異なり、複数回答の項目もあります。
つまり、すべての会社員に同じ効果が出るという数字ではありません。また、本人が感じた余力を調べたもので、削減時間を実測した結果でもありません。
それでも、時短の先に対話や学びを選んでいる人がいることは、今後の働き方を考えるヒントになります。
自分なら、どんなことに時間を使いたいでしょうか。
集計が早く終わったら、数字の「その先」を見られる

ここからは、調査の事例ではなく、仕事への活かし方を考えるための例です。
毎月、売上データをダウンロードし、Excelに貼り付けて不要な列を削除。取引先の名前を直し、担当者別に集計する。ようやく完成すると、もう提出期限。数字を詳しく見るのは翌月に持ち越し……。
そんな仕事で手作業を減らせたら、提出前に「先月と違うところ」を確認できます。
| これまで時間を使っていたこと | 時短後に取り組めること |
|---|---|
| データの転記や整形 | 集計対象の期間・件数・合計を確認する |
| 担当者別の合計を手作業で作る | 担当者や商品ごとの増減を見る |
| 表を完成させて提出する | 変化が大きい項目に短いコメントを添える |
例えば、ある取引先の売上が減っていたとします。
そこで「売上が落ちたから営業を強化しましょう」と、すぐ結論を出す必要はありません。まずは、注文回数と1回あたりの金額を分けて見ます。返品や締め日の違いも確認します。
そのうえで担当者に、「注文回数が減っていますが、何か状況が変わりましたか?」と聞いてみる。
すると、納品時期の変更だったと分かるかもしれません。商品の欠品が続いていたのかもしれません。追加の対応が必要な場合もあれば、様子を見るのが適切な場合もあります。
時短で生まれた余裕は、数字を確認し、人に聞き、次の対応を考えるために使えます。
大きな分析を始めなくても、「変化に気づいて確認する」ことが、仕事の一歩先です。
長年の事務経験が、気づきや判断に活きる
「分析や提案と聞くと、自分には難しそう」と感じるかもしれません。
ただ、長く仕事をしている人は、数字だけでは分からない事情を知っています。
「あの取引先は、注文の間隔が長い」
「この商品は季節によって動きが変わる」
「この数字には、返品が含まれている」
こうした知識は、表を正しく読むための手がかりです。AIがもっともらしい説明を出しても、自社の事情に合うかどうかは確かめる必要があります。
AIには、確認すべき観点の整理や、説明文の下書きを手伝ってもらう。自分は元の数字や現場の状況を確かめる。この組み合わせなら、これまでの経験を使いながら仕事の幅を広げられます。
なお、会社のデータをAIに渡すときは、社内ルールと利用が認められた環境を確認してください。練習では架空のデータを使えます。
役割を広げる考え方は、AIで職種の壁が低くなる?今の仕事で「できる」を増やす方法でも紹介しています。
気づいたことを、伝わる形にしてみる
提案は、立派な企画書でなくても構いません。
「A社の注文回数が前月より減っています。納品時期の変更がないか、担当者に確認したいです」
このように、分かったこと・まだ分からないこと・次に確認したいことを分けるだけでも、相手は動きやすくなります。
事実と推測が混ざっていないか。誰が何をすればよいか分かるか。AIの下書きを、その目で見直してみましょう。
浮いた時間を、すべて追加の仕事に使わなくてもいい
時短できたら、何か新しい成果を出さなければならない。そう考えると、効率化が別の負担になってしまいます。
締切前に慌てず確認できることも、休暇前の引き継ぎを整えられることも、意味のある使い道です。残業を減らす方向を選んでもよいでしょう。
まずは「今、一番困っていること」を一つ選んでください。
- ミスが心配なら、確認に使う。
- 問い合わせをためているなら、対応に使う。
- 同じ質問を何度も受けるなら、手順の整理に使う。
- 新しい仕事に挑戦したいなら、その練習に使う。
時短した時間をどう使えるかは、担当業務や職場の方針にも左右されます。自分だけで抱えず、上司と相談することも大切です。
例えば、「集計の手作業を減らせたので、次回は取引先別の増減確認まで試したいです」と、使い道を具体的に伝えると話し合いやすくなります。
管理職の方も、早く終わった人に追加業務を渡す前に、確認・改善・学習にどれくらい時間を使うか相談してみてください。日常業務と両立できる範囲を決めることが、次の挑戦を支えます。
次に何を学ぶ?やってみたいことから選ぶ
空いた時間でExcelを学ぼうと思っても、機能が多すぎると迷います。
全部を覚えようとせず、やりたい仕事から、一つ選ぶと始めやすくなります。
| やってみたいこと | 学習候補 | 最初の練習 |
|---|---|---|
| 担当者別・商品別に売上をまとめる | SUMIFS、ピボットテーブル | 小さな売上表を担当者別に集計する |
| 毎月のデータ加工を繰り返せるようにする | Power Query | CSVの取り込みと不要列の削除を試す |
| 数字の変化を伝える | グラフ、比較の基本 | 月別売上を折れ線グラフにする |
| 気づきを短く説明する | AIを使った文章整理 | 架空の集計結果を3行で説明する |
Power Query(パワークエリ)は、データの取り込みや整形の手順を記録し、更新時に繰り返すための機能です。列の削除や表の結合などに使えます。AIそのものではありませんが、定期的な集計の準備を減らす選択肢になります。
初めの設定と確認には時間がかかります。また、元データの列名や形式が変わると修正が必要になることもあります。使える機能はExcelの版や環境によって異なるため、自分の環境を確認しましょう。
参考:Microsoft公式「ExcelのPower Queryについて」
ExcelとAIの使い分けを詳しく知りたい方は、関数が使えるExcel派にAIは必要?初心者+AIは熟練者にどこまで迫れるかへ。今すぐ有料のAI機能を契約しなくても、学べることはあります。
学びを仕事につなげたい人向けのExcel教材
無料の公式解説で試せるなら、まずはそれで十分です。
一方、「何から始めればよいか迷う」「順番に練習したい」という人には、書籍が選択肢になります。ここでは、目的の違う2冊を紹介します。
毎月の加工・集計を減らしたい人向け
『Excelパワークエリではじめるデータ集計の自動化(できるエキスパート)』
基本操作からデータの加工、実務を想定した集計までを扱う本です。出版社のページで練習用ファイルも提供されています。
- 学べること: データの取り込み・整形・集計。
- メリット: 順序に沿って、実際に操作しながら学べる。
- 注意点: 自社の帳票を完成させてもらうサービスではなく、練習を仕事に応用する時間が必要。
- 向いている人: 毎月、似た形式のデータを手作業で加工している人。
- 優先度が低い人: まずセル入力や数式の基礎を学びたい人、繰り返しの加工がほとんどない人。
- 代替手段: Microsoftの無料解説で小さなデータの取り込みを試す。
出版社掲載の定価は2,420円(税込)です。内容・試し読みはサンプルで確認できます。
Excelの使い方を広げたい人向け
『これが切り札 無敵のExcelテクニック』
関数、データ整理、グラフ、Power Queryなど、仕事で使うExcelの技を幅広く扱います。学習用のExcelブックも提供されています。
- 学べること: 日常の操作から集計・可視化まで、幅広い改善方法。
- メリット: 今の仕事に近い項目を探して試せる。
- 注意点: 内容は広く、Power Queryだけを体系的に学ぶ専門書とは違う。一部は有償版Microsoft 365 Copilotを使用。
- 向いている人: 基本操作はでき、自己流の作業を見直したい人。
- 優先度が低い人: Power Queryだけを集中して学びたい人。
- 代替手段: 困っている操作を一つに絞り、公式ヘルプで調べる。
出版社掲載の定価は1,760円(税込)です。詳細はサンプルで確認できます。
※書籍情報・定価は2026年10月10日確認。購入先で価格・在庫・学習環境をご確認ください。
2冊とも買う必要はありません。加工を繰り返す仕組みを学びたいなら前者、幅広いExcel作業を見直したいなら後者。まずは目次を見て、今の困りごとに合うか確かめてみましょう。
まずは、空いた時間で「一つの違い」を見つけてみよう
次の集計が早く終わったら、前月と違う数字を一つだけ探してみてください。
「何が変わった?」「元データに問題はない?」「誰に聞くと分かる?」
この三つを確認し、気づきを一文にする。それだけでも、集計した表を次の行動に使う練習になります。
まだ時短できていないなら、繰り返している作業を一つ書き出すところからで構いません。回数・かかる時間・困る点をメモすれば、学ぶ機能を選びやすくなります。
なお、時短やAIスキルだけで昇給・正社員化が決まるわけではありません。仕事の幅を広げたい人は、改善した内容や、その結果できるようになったことを記録しておくと、自分の役割を説明する材料になります。詳しくは、AIで仕事の評価は変わる?年齢・肩書きだけではない時代も参考にしてください。
AIで時短できたら、今まで気になっていたことに手を伸ばせる。
数字を丁寧に見る。人に聞く。作業を改善する。必要なことを一つ学ぶ。今の経験を使いながら、次にできることを選んでみましょう。

